1. 2021年10月28日の太陽フレア(X1.0)とプロトン現象の発生について
太陽サイクル25が始まってから2回目のXクラスの太陽フレア(X1.0)が、10月28日15時35分UTに太陽面で発生しました。このフレアの発生については広くメディアでも取り上げられました。
SDO衛星の極端紫外線画像(AIA094)によると、X1.0フレアは太陽面南半球中緯度のほぼ中央子午線付近に位置していた活動領域2887(S28W01)で発生しました。
GOES衛星の観測によると、このXクラスフレアの影響により静止軌道の10 MeV以上のプロトン粒子フラックスが10月28日16時00分UT頃から上昇を始め、28日17時40分UTに10PFUを超えました(プロトン現象の発生)。10月29日2時50分UTには最大の29.0PFUに達しました。その後、プロトン粒子フラックスは徐々に減少し30日16時10分UTに10PFUを下回り、この現象は終了しました。
SOHO探査機および、STEREO探査機の太陽コロナ観測画像によると、このXクラスフレアに伴い地球方向へ向かうコロナ質量放出(CME)が観測されました。DSCOVR衛星の太陽風観測によるとこのCMEは10月31日地球へ到来しましたが、惑星間空間を伝搬中に大きく減速されたため、地球磁気圏および電離圏への大きな影響は発生しませんでした。
2. 2021年11月2日の太陽フレア(M1.7, LDE)と地球電磁気圏への影響について
11月2日3時1分UTに、太陽面においてM1.7のLDEフレア(継続時間の長いX線フレア)が発生しました。
SDO衛星の極端紫外線画像(AIA094)によると、このMクラスフレアはこのとき太陽面のほぼ中央に位置していた活動領域2891(N16E03)で発生しました。10月28日 にXクラスフレアを発生させた活動領域2887 (S27W64)は太陽の自転により既に太陽面西側へ移動し、引き続きM1.5(11月1日 01時45分UT)、C1.3(18時01分UT)、C4.0(21時33分UT)の3つのLDEフレアを発生させていることが確認されています。
SOHO探査機の太陽コロナ観測画像(LASCO)によると、11月2日3時1分UT のM1.7LDEフレアに伴い、2日3時UT頃にFull-Halo型のCMEが発生しました。STEREO探査機の太陽コロナ観測画像(SECCHI COR2)によると、秒速1000kmの速度で地球方向へ拡がる様子が観測されています。またこれらの観測画像から、前日11月1日に発生したフレアに伴うCMEも複数回発生していることが確認されています。
DSCOVR衛星によると11月3日19時29分UTにCMEに伴う太陽風の衝撃波が観測されました。太陽風速度は秒速472 kmから最大秒速741 km、磁場強度は12nTから最大23nTまで上昇し、磁場の南北成分は一時-18nT前後の非常に強い南向きの状態となりました。11月1日から2日にかけて複数回発生したCMEが、惑星間空間を伝搬中に一体化して到来したと推測されます。
気象庁地磁気観測所(柿岡)によると、11月3日19時41分UTに急始型地磁気嵐が発生しました。この地磁気嵐に伴う地磁気水平成分の最大変化量は約215nTで、5日19時UT頃に終了しました。
国分寺(東京)におけるイオノゾンデ観測および国土地理院GEONETを用いた電離圏全電子数観測によると、11月4日と5日の日中にIP2の電離圏正相嵐、11月4日の夜間にIN2の電離圏負相嵐を観測しました。これらの電離圏嵐は、11月3日から5日にかけての地磁気嵐の影響を受けたものと考えられます。
大宜味(沖縄)および山川(鹿児島)のイオノゾンデ観測によると、11月5日の夜明け前から朝にかけて、電離圏エコーの散乱が観測されました。また、電離圏全電子数観測によると、同時刻に30分以下のTEC変動成分マップに南西から北東に伸びる筋状の構造が見られ、その構造に対応してTEC擾乱指数(ROTI)の上昇がみられました。これらの観測結果は、プラズマバブルの発生により引き起こされたと考えられます。同様の現象は、大宜味のイオノゾンデ観測および全電子数観測によって、11月1日の未明および夜間にも観測されました。