磁気圏領域

磁気圏

図1 地球磁場, 緑色の線は磁力線

地球は磁場を持つ惑星の一つです。方位磁石のN極が地球表面のどこでもほぼ北を向くのは、 地球内部の外核と呼ばれる領域に流れる電流によって北極がS極、南極がN極となるような磁場が作られているからです(図1)。

図2 地球磁気圏は宇宙線から地球を守るバリアの役目を果たしている

電子やイオンなどの電気を帯びた粒子(荷電粒子・プラズマ)は、磁場によって曲げられる性質があります。 そのため、銀河宇宙線やプロトン現象(SEP *1)等に伴う高エネルギーの荷電粒子が、 地球の中低緯度まで入り込みにくくなっています(図2)。すなわち、地球磁場は、 宇宙空間の高エネルギー粒子に対するバリアの役割を果たしています。

図3 磁気圏シミュレーションで再現した地球磁気圏, 緑色の線が地球磁場の磁力線, 黄色が磁気圏周辺のプラズマの圧力分布, 左側から太陽風が吹きつけ地球の磁力線が反対方向に伸びている

地球の磁場はどこまでも遠くまで拡がっているわけではなく、太陽からやってくるプラズマの風、 太陽風によって吹き流され彗星の尾のような構造をつくっています。この構造を地球磁気圏と呼んでいます(図3)。 地球磁気圏の状態は、太陽風の作用によって大きく変化します。

  • *1 SEP=Solar Energetic Particles, 太陽高エネルギー粒子

磁気圏対流

図4 南向きIMFによる磁気圏対流の駆動の概観

太陽風エネルギーの磁気圏への流入効率は、太陽風中の磁場、IMF*1の向きに大きくコントロールされています。

地球の固有磁場は北極がS極、南極がN極となっていますので、地球の磁力線は南半球から出て北半球へと入る「北向き」です。 磁気圏昼側に到来するIMFが北向きの場合、地球磁場とIMFは同じ向きですから、 両者は磁気圏界面で近接するものの大きな相互作用をすることなく、太陽風は磁気圏の上下左右へと流れて行きます。 しかしIMFが南向きの場合、地球磁場とIMFは反平行となり、磁力線の繋ぎ替わり「磁気再結合/磁気リコネクション」が起こります。 結果、両端を地球に持つ通常の磁力線「閉じた磁力線」に対し、一方の端を地球に置きながら、 もう一方の端はIMFと繋がった「開いた磁力線」が生成されます。 「開いた磁力線」は、一方の端を地球に置いたまま太陽風に引っ張られて尾部に運ばれていきます。 尾部遠方では、運ばれてきた南北両半球の「開いた磁力線」が次第に近づいてきます。そこではまた、 反平行の磁力線が近づくことになりますので、磁気再結合によって南北起源の磁力線が再び繋がり、 両端を地球に置く「閉じた磁力線」となり、本来の双極子磁場に戻ろうとする力によって、 地球方向さらには磁気圏昼側へと移動します。これにより、昼側で「開いた磁力線」として運び去られる磁力線を埋め合わせています。

このような一連の磁力線運動とともに、プラズマも一緒に動きます。 この循環プロセスを「磁気圏対流」といいます(図4)。 このように、太陽風エネルギーが磁気リコネクションによって効率的に磁気圏に流入し、大規模な磁気圏対流を駆動しています。 北向きIMFの時に太陽風エネルギーが磁気圏にまったく流入しないわけではありません。 IMFの向きによらず、磁気圏の上下左右へと逸れて行く太陽風プラズマと磁気圏プラズマとの粘性によって、 太陽風エネルギーが磁気圏界面から磁気圏に流入すると考えられています。 しかしながら、IMF南向きの磁気再結合によるエネルギー流入が圧倒的に大きいと考えられています。

  • *1 IMF = Interplanetary Magnetic Field, 惑星間空間磁場

磁気嵐

図5 赤道環電流によって地上中低緯度域にもたらされる磁場変動, 緑実線は地球固有磁場, 赤実線は赤道環電流, 青破線は赤道環電流が作り出す磁場

強い南向きIMF*1と高速太陽風によって、大量の太陽風エネルギーが磁気圏に流入すると、 磁気圏最大の擾乱現象「磁気嵐」が発生します。磁気圏対流の促進、大規模オーロラ嵐の連続的発生、 内部磁気圏へのプラズマ流入の増大、内部磁気圏でのプラズマ粒子の加速・加熱の促進、それによる赤道環電流の増強、 放射線帯の消失・回復、などが起こります。

磁気嵐は、それを駆動する太陽風構造によって2つのタイプに大別されます。 1つは、CME *2駆動による磁気嵐です。低速領域の中を高速で押し寄せてくるCME本体の磁気雲の全面では、 たいてい衝撃波が発達しており、これが到来すると磁気圏はまず急激に圧縮されます。その後は、磁気雲中の磁場が南向きかどうか、 およびその強度で、磁気嵐の規模が決まります。最初北向きIMFでも磁気雲通過とともに磁場極性が回転し、 南向きIMFになることも大いにありますので、CME が地球に到来すると大きな確率で磁気嵐が発生します。 もう1つは、 コロナホールからの高速太陽風による磁気嵐です。ただし、CMEや高速太陽風が到来しても、 南向きIMFがあまり大きくなかったり、太陽風速度があまり上昇しない場合は、磁気嵐にならない場合もあります。

なお、磁気圏の急圧縮で始まる磁気嵐は急始型磁気嵐、急圧縮が明瞭ではないものは緩始型磁気嵐と呼ばれます。 また、赤道環電流の発達は、中低緯度の地磁気の南北成分の減少となって表れます(図5)。

  • *1 IMF = Interplanetary Magnetic Field, 惑星間空間磁場
  • *2 CME = Coronal Mass Ejection, コロナ質量放出

放射線帯

図6 地球を取り囲む放射線帯のイメージ, 内帯と外帯の2重構造

地球磁気圏内には、エネルギーの高い電子やイオンが地球の磁場に捕捉された放射線帯(ヴァン・アレン帯)と呼ばれている領域があります。 放射線帯は赤道上空約3000kmを中心として分布する内帯と約20,000kmを中心に分布する外帯の2重構造になっています(図6)。

内帯には主に高エネルギーの陽子、イオンが分布していて、外帯には高エネルギーの電子が分布しています。 外帯は人工衛星が多数運用されている静止軌道まで広がっています。放射線帯は安定して存在せず、 宇宙環境の変動で大きく変化します。特に放射線帯外帯は太陽風の影響でフラックス量が数桁単位で大きく増減し、時に人工衛星に障害をもたらすこともあります。