地球大気の上層は、太陽紫外線やX線の吸収などにより、その一部がイオンと電子に分れた(電離した)状態になっています。 この領域は電離圏と呼ばれます。歴史的には「電離層」と呼ばれてきましたが、近年では「電離圏」と呼ばれることが多くなっています。 電離圏は、高度約60kmから1000km以上にわたって存在し、その高度分布の形からD領域、E領域、F領域といった領域に分けられます(図1)。
これらの領域は、電離源である太陽光の入射強度や背景大気の状態に応じて時間・空間的に変化します。 日本付近では、基本的にどの領域も南にいくほど電子密度が大きくなります。また、1日周期の変動や季節に伴う変動、 約11年周期の太陽活動に伴う変動など、規則的に繰り返される変動があります。こうした周期的な変動に加えて、 不規則な電離圏の乱れも発生します。例えば、大規模な太陽フレアの直後には、D領域の電子密度が異常増大し、 短波帯の通信途絶を引き起こす「デリンジャー現象」が発生します。 磁気圏が乱れたときにはF領域の電子密度が増減する「電離圏嵐」が発生することがあります。 さらに、「スポラディックE層」や「プラズマバブル」など、特定の季節に不規則に発生する局所的な乱れもあります。