太陽風エネルギーの磁気圏への流入効率は、太陽風中の磁場、IMF*1の向きに大きくコントロールされています。
地球の固有磁場は北極がS極、南極がN極となっていますので、地球の磁力線は南半球から出て北半球へと入る「北向き」です。 磁気圏昼側に到来するIMFが北向きの場合、地球磁場とIMFは同じ向きですから、 両者は磁気圏界面で近接するものの大きな相互作用をすることなく、太陽風は磁気圏の上下左右へと流れて行きます。 しかしIMFが南向きの場合、地球磁場とIMFは反平行となり、磁力線の繋ぎ替わり「磁気再結合/磁気リコネクション」が起こります。 結果、両端を地球に持つ通常の磁力線「閉じた磁力線」に対し、一方の端を地球に置きながら、
もう一方の端はIMFと繋がった「開いた磁力線」が生成されます。 「開いた磁力線」は、一方の端を地球に置いたまま太陽風に引っ張られて尾部に運ばれていきます。 尾部遠方では、運ばれてきた南北両半球の「開いた磁力線」が次第に近づいてきます。そこではまた、 反平行の磁力線が近づくことになりますので、磁気再結合によって南北起源の磁力線が再び繋がり、 両端を地球に置く「閉じた磁力線」となり、本来の双極子磁場に戻ろうとする力によって、 地球方向さらには磁気圏昼側へと移動します。これにより、昼側で「開いた磁力線」として運び去られる磁力線を埋め合わせています。
このような一連の磁力線運動とともに、プラズマも一緒に動きます。 この循環プロセスを「磁気圏対流」といいます(図4)。 このように、太陽風エネルギーが磁気リコネクションによって効率的に磁気圏に流入し、大規模な磁気圏対流を駆動しています。 北向きIMFの時に太陽風エネルギーが磁気圏にまったく流入しないわけではありません。 IMFの向きによらず、磁気圏の上下左右へと逸れて行く太陽風プラズマと磁気圏プラズマとの粘性によって、 太陽風エネルギーが磁気圏界面から磁気圏に流入すると考えられています。
しかしながら、IMF南向きの磁気再結合によるエネルギー流入が圧倒的に大きいと考えられています。
- *1 IMF = Interplanetary Magnetic Field, 惑星間空間磁場