トピックス詳細
大規模な太陽フレアが発生、地球方向へ噴出された高速コロナガスと高エネルギー粒子を観測
国立研究開発法人情報通信研究機構
電磁波研究所電磁波伝搬研究センター 宇宙環境研究室
2026年2月19日 15時40分 更新
太陽光エネルギー粒子・太陽風・電離圏嵐・地磁気じょう乱・社会影響について情報追加
2026年1月20日 21時00分 更新
今後の推移について情報追加
2026年1月20日 18時00分 作成
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、日本時間1月19日(月)3時9分に、太陽面中央付近において大型の太陽面爆発現象(太陽フレア)の発生を確認しました。この現象に伴い、地球方向への大規模なコロナガスの噴出および高エネルギーのプロトン粒子の増加が確認され、NICTは宇宙天気イベント通報SAFIRにより、日本時間1月20日3時26分に宇宙システム運用へ最大限の注意を促す警報を発出しました。また、柿岡地磁気観測所によると、日本時間1月20日4時17分に地磁気嵐の発生が報告されています。この宇宙天気の乱れにより、GPSを用いた高精度測位の誤差の増大、短波通信障害への影響、宇宙システムの運用への影響が生じました。
よくある質問は、こちらをご参照ください。
背景
NICTは太陽活動や宇宙環境変動の観測を行い、その現況と推移に関する情報提供を行っています。
観測した現象
1. 大規模太陽フレア
太陽面の中央付近に位置している黒点群14341で、日本時間1月19日(月)3時9分にX1.9のLDEフレア(継続時間の長い太陽フレア)が発生しました。
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発生日(日本時間) |
発生時刻(日本時間) |
規模 |
|---|---|---|
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2026年1月19日 |
3時9分 |
X1.9 |
X線強度の推移(図1)と、発生した太陽フレアの紫外線観測画像および黒点の画像(図2)を以下に示します。
図1:人工衛星GOES(米国NOAA)により観測された太陽X線強度。グラフの時刻はUT表記。
図2:人工衛星SDO(米国NASA)により観測された太陽白色光画像(左)と、
人工衛星GOES(米国NOAA)により観測された太陽紫外線画像(右)
2. デリンジャー現象
1月19日に発生したX1.9フレアは日本時間で夜間帯の発生であったため、デリンジャー現象は発生しませんでした。
3. 太陽高エネルギー粒子
1月19日(日本時間)に発生したX1.9フレアに伴い、静止軌道(高度約36,000km)で高エネルギープロトンの増加が観測されました(図3上)。米国の静止軌道衛星GOESの観測によると、このX1.9フレアの影響によりエネルギー10MeV以上のプロトンフラックスが1月19日4時30分頃(日本時間)から上昇をはじめ、19日7時55分(日本時間)に10PFUを超えてプロトン現象が発生しました。その後、プロトンフラックスは上昇を続け、19日13時40分(日本時間)に100PFU、19日19時15分(日本時間)に1000PFUを超えました。20日3時10分(日本時間)には10000PFUを超え、20日4時15分(日本時間)に最大37072PFUに達しました。その後、22日3時35分(日本時間)に10PFU以下の低いレベルまで減少し、プロトン現象が終了しました。静止気象衛星ひまわりの観測からも、日本経度域の静止軌道(東経140度)でも同様にプロトンが増加したことが確認されました。(図3下)。
なお、このプロトン現象により、2025年6月に運用を開始した宇宙天気イベント通報SAFIRにおいて、初めて警報(Lv3)基準を超えました。今回のプロトン現象では、1976年に観測を開始したGOES衛星の観測史上、過去3番目のプロトンフラックスが記録されました。また、エネルギー10MeV以上のプロトンフラックスが10000PFUを超えたのは、2003年10月末(いわゆるハロウィーンイベント)以来です。
図3:静止軌道衛星GOES(米国 NOAA)によるプロトンの観測値(上)、および
気象衛星ひまわり8号(日本 気象庁・NICT)によるプロトンの観測値(下)。
グラフの時刻はUT表記。
一連のプロトンフラックスの変化に関連して、南極昭和基地のイオノゾンデ観測にて短波減衰が確認されました(図4)。プロトンフラックスが増大した1月19日から20日にかけて電離圏反射エコーが見られなくなり、通常よりも反射エコーが減衰した状況は1月21日頃まで続きました。
図4:南極昭和基地のイオノゾンデによる電離圏反射エコーを白色で示す。グラフの時刻はUT表記。
4. 太陽コロナガス
今回観測されたX1.9フレアに伴い、ハロー型のコロナガスの放出が観測されました(図5)。このコロナガスの放出速度は1800km/sを超える非常に高速なものでした。
図5:探査機SOHO(欧州ESA・米国NASA)によって観測されたコロナガス放出の様子。中心部の白丸が太陽の位置を示す。
5. 太陽風
探査機ACEの観測によると、X1.9フレアに伴って放出された太陽コロナガスは、1月20日4時頃(日本時間)に地球周辺へ到来しました(図6)。通常よりも短い、フレア発生から約1日での到来であったことが特に注目すべき点です。太陽コロナガスの到来に伴い太陽風の速度・磁場強度が急激に上昇し、速度は約1100km/s、磁場強度は約91nTに達しました。また、磁場の南北成分(Bz)は一時 -58nTまで低下し、非常に強い南向きが状態となりました。
図6:探査機ACE(米国NOAA・NASA)による太陽風の観測値。グラフの時刻はUT表記。
6. 地磁気じょう乱
気象庁地磁気観測所(柿岡)によると、1月20日4時17分(日本時間)に、急始型地磁気嵐が発生しました。この地磁気嵐に伴う地磁気水平成分の最大変化量は、約427nTでした。K指数は、 1月20日3〜9時(日本時間)、同日18~21時(日本時間)にK指数「8」(0〜9の10段階で上から2番目)、同日9~12時(日本時間)、1月21日0〜3時(日本時間)に「7」が観測されました(図7)。地磁気観測所(柿岡)でK指数=8が連続的に観測されたのは、2025年11月以来です。この地磁気嵐は、1月22日15時頃(日本時間)に終了しました。
なお、この地磁気嵐については日本時間1月21日に気象庁から報道発表がありました。
図7:気象庁地磁気観測所(柿岡)による地磁気指数。グラフの時刻はUT表記。
7. 電離圏嵐
地磁気嵐の発生に伴い、日本時間の1月20日の朝方に関東以南の特に南部において、同日午後に国内全域において、電離圏正相嵐の発生が確認されました(図8)。また、1月21日の朝方から昼頃にかけてと、1月21日の夜間から1月22日の朝方にかけて、国内全域において電離圏負相嵐の発生が確認されました。
図8:国土地理院GEONETデータから算出された日本上空の電離圏全電子数の推移(確定版)。
電離圏嵐指標「I-scale(アイ・スケール)」についてはこちら。
1月20日の正相嵐が発生していた時間帯のうち、世界時0〜1時と11時〜15時ごろ(日本時間9〜10時と20時〜0時ごろ)に、基準局の位置情報を利用するRTK-GNSS等の相対測位に影響があった可能性があります。図9に、後処理キネマティック解析により算出した測位誤差(上段)、電離圏全電子数およびじょう乱指数(下段)を示します。
図9:後処理キネマティック解析により算出した測位誤差(上段)、電離圏全電子数およびじょう乱指数(下段)
社会影響
今回発生した大規模太陽フレアおよび関連現象に伴い、国内外で確認・報告された影響を以下にまとめます。
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分野 |
場所 |
影響 |
主な影響・対応等 |
|---|---|---|---|
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GNSS |
国内 |
有 |
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通信・放送 |
不定 |
有 |
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宇宙システム |
国内外 |
有 |
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航空 |
不定 |
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電力 |
国内外 |
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その他 |
国内外 |
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※1 https://www.gsi.go.jp/denshi/denshi65020.html
※2 https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2601/30/news115.html
※3 衛星直下点を中心にARC(能動型レーダ校正機)3台を設置して実施する実験
用語解説
・太陽フレア
太陽の黒点付近で生じる爆発現象。強い紫外線やX線、電波等が放射されるほか、コロナガスが放出されることもあります。発生したフレアのX線強度の最大値により、小規模なものから、A、B、C、M、Xの順にクラス分けされています。
・デリンジャー現象
大規模な太陽フレアに伴うX線や紫外線の急増により、高度60-90 km程度の電離圏D領域が異常電離して電子密度が高くなり、通常はD領域を通過する短波帯の電波が吸収されてしまう現象。
・コロナガス放出(Coronal Mass Ejection (CME))
太陽の上層大気であるコロナのガスが惑星間空間に放出される現象。地球に到来すると大規模な宇宙環境変動を引き起こすことがあります。
・プロトン現象
太陽フレアやコロナガス放出に伴い、高エネルギーの粒子が放出され、静止軌道(高度約36,000 km)上で観測されるエネルギーが10 MeV以上のプロトン粒子フラックスが10 PFU(Proton Flux Unit [particles/cm2 sr s])を超える場合を「プロトン現象」と呼ぶ。